気が付くといつの間にか発生しているカビですが、カビ自体は空気中を含めどこにでも存在しています。目に見えるぐらいまで成長するにはカビには生育条件を満たす必要がありますが、生育に条件があるという事は、逆に条件を満たしていないと生育はしません。
今回はカビの生育条件と、どのように成長を阻害し家にカビを生やさないようにするかを家庭内で検出できるカビ菌の中でも特に多く、家の中何処でも検出される黒カビ(クラドスポリウム)を中心に話していきたいと思います。
まず、カビは至る所にいます。浴室やエアコンのカビ退治の話はよくお掃除のコラムでも書いてありますが、菌自体は家中何処にでもいますし、条件さえ合っていれば地球上どこでも繁殖します。特に日本の気候では、カビを家から完全になくすことは不可能と言っても過言ではありませんので根絶は諦めて、繁殖させない方法といかに家の中にカビを持ち込まないようにするかを考えてください。
目次
1.カビとは
1-1.カビと健康
1-2.カビの生育過程
1-3.黒カビ(クラドスポリウム)の特性
1-4.カビの生育要素
2.カビの繁殖予防
2-1.湿度のコントロール
2-2.換気をする。
2-3.実はカビは熱湯で死滅します!
2-4.具体的な熱湯処理
まとめ
1.カビとは
カビ・酵母・キノコなどの真菌類は150万種類以上といわれ、その内家庭内で検出できるカビは、約300種類程度といわれています。また一箇所に複数種類のカビが同居ながら繁殖する事が多く、小指の先ほどの広さでも約20~30億個のカビの胞子が存在しているといわれています。このカビの集合体から大量に胞子が拡散し、繁殖範囲を広げています。
また、よく見かける赤カビと間違われる浴室や洗面器の排水溝にみられるピンク色のぬめりは、酵母の一種でロドトルラと呼ばれるものです。拭けば一時的にキレイになります。しかし菌類ですので、拭いただけですと菌がその場に残っているため、数日後にはピンク色のぬめりが元通りになってしまいます。ですので、除菌効果のある洗剤やカビ取り剤を使用して落とさないと菌がその場に残ったままです。
1-1.カビと健康
基本的にカビの胞子を吸い込んでも、健康な人にとっては殆ど影響がありません。普通に日常生活を送っていてもカビを吸い込んでしまいますが、抵抗力が低い年配者や乳幼児、病気で抵抗力が低下している人が大量にカビを吸い込んでしまうと病気を発病する可能性があります。特に5歳未満の子供は小児喘息発症の危険性が高まるともいわれているので、お子様が小さいうちは、大量のカビを吸わないためにもエアコンクリーニングを毎年することを進めています。パッと見汚れていなくても、中が汚れていることもありますし、汚れが酷くなる前にキレイにすることが重要です。
1-2.カビの生育過程
空気中に漂っているカビの胞子が床面や壁などに着いてから発芽から始まります。発芽した胞子は、菌糸(植物の根をイメージしてください)を横や下に伸ばしながら周辺の栄養源(建材など)を体内に吸収して成長していきます。菌糸が成熟するとその中に上部に伸びる生殖菌糸(植物で言うと茎のようなイメージ)が現われ、さらに成長すると生殖菌糸の先端に分生子といわれる無数の胞子の集まりが現れます。その分生子を含むカビの集合体がコロニーと呼ばれるものです。胞子が成熟すると空気中に放出され、同じサイクルを繰り返して増殖します。
1-3.黒カビ(クラドスポリウム)の特性
クラドスポリウムは黒カビとも呼ばれるように私たちが目にするときには黒く見えますが、元々は透明な暗褐色です。本来は透明なので見えないのですが、密集することにより、黒く見えてしまいます。つまり黒く見えた段階ではすでに成長しており、見えている黒カビの周りには、まだ見えていないだけで成長中のカビの集合体が多数いるのです。
更に言うとクラドスポリウムの分生子は非常に脆く、ちょっとした衝撃でもバラバラに飛び散ってしまうので、黒カビは乾燥した状態で拭き取らず、洗剤を直接かけ濡らすか、濡れたタオルなどで拭き取らないと、カビ菌を周辺飛散させることになります。また成長速度も速く、適正条件ですと1日でコロニーが6㎜も拡大すると報告されています。
1-4.カビの生育要素
カビは地球上の至る所にいますが、どのような条件で生育されるのかといえば、カビがいる場所に4つの要素がそろった時に生育されます。
酸素 |
生育をするために必要 |
栄養 |
ホコリや塵、皮脂などの汚れや建材を含め天然有機物や人工有機物、一部鉱物にも生えます。特にカビは炭水化物や糖を含んだ穀類,豆類,イモ類に好んで繁殖する傾向があります |
温度 |
0~40℃で生育し、25~28℃で爆発的に生育する |
湿度 |
一般には湿度80%以上でよく生育する。60%以下でも発育する菌もいるが成長スピードは緩やかになる |
この4要素がそろったときに、カビは生育されるのですが、逆に言えばいずれか一つでも条件を満たさなければ、カビが繁殖することはありません。
2.カビの繁殖予防対策
生育の4要素の内いずれか1つでも条件を外せば、繁殖を防ぐことができるのです。
酸素 ⇒地球上に存在している限り、無くすことは不可能(※食品などでは密閉容器に入れ脱酸素剤を使用することもあります)
栄養素 ⇒ ホコリや塵、皮脂などの汚れや建材を含め、天然や人工を問わず有機物すべてと、一部鉱物も含まれるため、これも無くすことは不可能です。
温度 ⇒15~30℃が適正ですが、0~40℃でも繁殖します。
湿度 ⇒湿度80%以上でよく発育しますが、60%以下だと発育スピードは緩やかになります。
つまり湿度をコントロールする方法が、繁殖を防ぐのに効果的です。
2-1.湿度のコントロール
浴室乾燥機を使用する方法が最も簡単です。
ただし、2点注意してください
- 浴槽は空にする
翌日の洗濯などや防災のために浴槽にお湯を張りっぱなしにしていたら、湿度のもとになる水が大量にあることになるので、浴室乾燥する意味がなくなります。
- 壁に水滴が残っている場合は、しっかり取り除いてから浴室乾燥機をかけてください。
水滴が残っている状態で、浴室乾燥機を使用してしまうと、カビではない浴室の代表的な汚れ『水垢』が量産されます。2~3日でも軽度な水垢ができ始め1週間も連続で濡れっぱなしのまま浴室乾燥機を使えば、かなり頑固な水垢汚れになってしまいます。
2-2.換気をする。
浴室も風の通り道を考えて窓を開けたり、換気扇を付けたりするだけでカビの生育を阻害することができます。浴室の場合は、窓を開けて換気扇を付けると空気の流れは窓と換気扇の一部分でしか行われないので、効率よく寒気はできません。そのため窓や扉を閉めて、換気扇を使ってください。そうすることによって、全体の空気が循環し換気口率が上がります。また、浴室以外のもクローゼットもスノコなどで隙間を作り、扇風機などで風を送ってあげて湿度をこもらせないようにすると効果かがります。
2-3.実はカビは熱湯で死滅します!
ほとんどのカビは熱に弱いので熱を利用して、カビを退治する方法があります。先ほど浴室乾燥機や換気について触れましたが、その場合は生育しなくなるだけで、カビ菌はその場に留まっています。死滅方法は皆様もよくご存じの通り、カビ取り剤を使用する方法があり、カビを死滅させることはできますが、やはり臭いや強力な洗剤なため、使用するのもためらってしまうのではないでしょうか。温度と加熱時間はよって種類は異なりますが、多くのカビは、40℃以上になると、活動が低下し、45℃ぐらいから死滅する種類が増えてきます。
家中何処にでもいる黒カビのクラドスポリウムですが、お風呂場で見かけることが多く、カビをどうにかしたい=お風呂場のカビと考える方も多いと思います。このクラドスポリウムは、60℃以上のお湯で、10分ほど熱するとほぼ死滅します。更に50℃でも菌糸が死滅しはじめるので、繁殖を防ぐことができます。
もちろんすべてのカビが必ず死滅するわけではなく75℃で、30分加熱しても死滅しない耐熱性カビも存在します。
またカビを死滅することが可能ですが、防カビすることは出来ません。家庭環境にもよりますが、カビ菌は至る所に存在します。目に見える場所にいるカビを死滅させることは出来たとしても、家に存在しているカビ菌をすべて死滅させることは不可能です。
2-4.具体的な熱湯処理
- 浴槽の栓を抜き、浴槽を空にします。
- 温度設定を60℃にします。(時期にもよりますが、シャワーが空気に触れれば温度の低下が始まります。更に壁に当てた時にも温度が低下するので、ちょっと高めに設定してください。)
- 浴室の四隅など、カビが良く生える場所1か所に90秒以上掛けてください。シャワーは固定して動かさず、その場所を温めるイメージです!奥まで入り込んだ菌糸を死滅させるために1か所に付き90秒以上高温のお湯をかけ続けることが重要です。
- 高温のお湯をかけたままですと、浴室全体が湯気でおおわれてしまい、次のカビの原因にもなりかねないので冷水を浴室全体に掛け冷やします。
- スクイジーなどを使ってできる限り水気を取ります。
- 窓や扉を閉めて24時間換気にするか、3時間以上浴室乾燥をします。
風呂場の湿度をしっかり下げることで、カビの死滅だけでなく、これら入ってくる可能性のあるカビに対しても生育しにくい環境作りになります。お風呂上りに熱湯をかけることで、皮脂汚れや、石鹸の残りなども流してくれるので、汚れが溜まらず日々の掃除も楽になります。
まとめ
日本はカビの繁殖に適した気候と、カビの栄養となる材質が多く使われて家が建てられていることが多いため、その場にいるカビを死滅させてとしても、窓の外から、換気扇から、もしくは人間がカビを持ってきますので、カビとの戦いに終わりはありません。
室内の空調管理に、エアコンを使う方は多いと思います。冷房や除湿を使うと、エアコンの内部で結露が発生し、エアコン内部でカビが繁殖してしまいカビを部屋中にまき散らしていることも多々あります。ただそのカビを減らすための機能としてエアコン内部を乾燥させる機能が付いた機種も販売されていますので、内部乾燥機能がついたエアコンであれば、しっかり設定することを進めます。
まずはプロに頼んで、エアコンクリーニングをしてキレイにすると、カビの繁殖をより抑えられます。ついでにエアコンの機能のことを詳しく聞いて設定してもらうのもいいと思います。また浴室の全体のお掃除は重労働ですので、プロに任せてカビを徹底除去した後に、熱湯を使ってキレイな状態を維持することをお勧めします。